コーヒーマシンのある社会を目指す、ブルーマチックジャパンの軌跡。

日本で初めてのオリンピックが開催された 1960年代、ブルーマチックジャパン創業者の河口俊政氏は、商社でコーヒー豆の輸入に携わっていました。当時はインスタントコーヒーの国産化が進められていた頃で、コーヒーは現在のように人々の日常に浸透しているとは言えない状況でした。

スマートフォンやインターネットはおろか、パソコンの誕生さえもまだ 10 年も先の話。リソースで勝る大手商社と肩を並べてのコーヒー輸入業は決して楽とは言えず、河口氏をはじめとする面々はコーヒー事業の拡大をもくろみ、1966 年にサンフランシスコ視察へ向かいます。その頃のアメリカでは、ダイナーやコーヒーショップなどで日常的にコーヒーが飲まれており、一般家庭にもパーコレーターが普及するなど、彼らはサンフランシスコでアメリカ人の生活とコーヒーの近さを目の当たりにします。当時のアメリカは日本人にとっては憧れの地。音楽やファッションや食文化など、ライフスタイルのお手本とされていたことから、日本人の日常にコーヒーが溶け込んでいくのは時間の問題、と彼らはコーヒーマシンの輸入に着手しました。

 

突破口を開いた宴会場

まず目をつけたのは、一度に 12 杯分のコーヒーを抽出でき、当時アメリカで大ヒットしていたウエスタンアーン社の「ディプロマット」でした。しかし見込み顧客として狙っていた喫茶店では、ネルを使って一杯一杯丁寧に淹れるスタイルが根付いており、営業は思うように進みません。「喫茶店にマシンを売りに行ったら、そんなものでうまくコーヒーが淹れられるわけがないだろうって怒られました」と当時を振り返る河口氏。

そこで全国に顧客を持つロースターや厨房器具を扱う企業に協力を仰ぎ、販売先を模索した結果、帝国ホテルの名が浮かびあがりました。先述のとおり当時の日本では、まだ毎朝コーヒーを飲むという習慣は根付いておらず、大量にコーヒーを提供する場としては、大型の宴会場がある帝国ホテルしか実質存在しなかったのです。「その頃の帝国ホテルでは、大量にコーヒーを抽出するとき、大きなネルを使って複数人で樽の中にコーヒーを落とすというかなりの重労働を行っていました」と河口氏。そこで一度に 10 リットル以上のコーヒーを抽出できる「コーヒーアーン」を提案したところ、 10 分程度で大量のコーヒーを準備できる機能性に帝国ホテルは大きな価値を見出し、1969 年、帝国ホテルの宴会場に一台のコーヒーマシンが導入されることに。奇しくも、1964 年の東京オリンピックや 1970 年の大阪万博のために日本全国で大型ホテルの開業が続き、コーヒーマシンの需要は徐々に高まっていきました。さらに 1972 年には山陽新幹線が開業し、2 年後には博多駅まで路線が延びたことから、新幹線内のビュッフェスペースという新たなマーケットを獲得していきます。

新幹線の次にコーヒーマシンが広く使われるようになったのが空港です。1978 年の成田国際空港の開港だけでなく、羽田空港の拡張や全国各地に空港がつくられていき、それに伴ってコーヒーマシンも全国に広がっていきました。さらには 1971年に上陸したマクドナルドにもブルーマチックのマシンが導入され、1980 年代に入ってコーヒーチェーンが国内で拡大するとドトールコーヒーをはじめとするコーヒーチェーンが勢いづいていきます。

 

ブルーマチックジャパンの誕生

しかしここで大きな変化が訪れます。当時河口氏が勤めていた商社において、コーヒー事業の主役はあくまで生豆の輸入であり、会社の方針転換や規模の問題からコーヒーマシン事業から手を引くことになったのです。自らが深く携わっていたコーヒーマシン事業を離れなければいけないのか、と頭を悩ませていた河口氏。そこで彼に声をかけたのがブルーマチックインターナショナル社(1972 年にウェスタンアーンから社名変更)のゼネラルマネージャーだったヘルムート・グルーナー氏です。彼は河口氏らのチームでコーヒーマシン事業を商社から引き継ぎ独立してはどうかと提案したのです。独立を提案した背景について、グルーナー氏は当時のヒット商品だった先述の「ディプロマティック」という商品を為替の関係から日本で組み立てたことがあり、そのときの仕事の細やかさと管理体制に感銘を受けたからだったと語っています。こうしてコーヒー部門が独立し、 1984 年にブルーマチックジャパンが横浜で創業しました。

そして 1986 年、ブルーマチックジャパンは新たな一歩を踏み出すことになります。エスプレッソマシン市場への進出です。1990 年頃にティラミスをはじめとするイタリアの食文化が日本で一大ブームを巻き起こしました。しかしそれまでドリップコーヒーがメインだった日本では、一部の高級料理店や専門店でしかエスプレッソは出されていない時代。かつて全国の喫茶店を訪れてコーヒーマシンを売り込んだときの記憶が蘇ります。そしてバブルが崩壊し、コーヒーマシン事業は踊り場にさしかかりました。しかし 1990 年代にスターバックスの上陸とともに訪れた「シアトル系コーヒー」が流行、さらに 2000 年代にはコンビニコーヒーが人気を博したことから、エスプレッソマシンの市場も拡大し、ドリップ用のマシンに次ぐ新たな主要製品が生まれました。

 

新たな波

60 年近く前からコーヒーに携わってきたブルーマチックの面々が「次なる波」に出くわすのは時間の問題でした。海外の展示会を視察する中で「スペシャルティコーヒー」という単語を耳にするようになった頃、既に取引のあったドリップコーヒーマシンメーカーの Curtis やグラインダーメーカーの BARATZA もスペシャルティコーヒー市場を意識した製品の開発や SCA のイベントスポンサーなどを通じてスペシャルティへのシフトを図っているという話を聞き、自然と次に進むべき道が見えてきました。しかし全自動マシンやドリップ式マシンに関してはこれまでのビジネスで知見を積み上げてきたものの、スペシャルティコーヒー店で主に使われるセミオートのマシンはブルーマチックジャパンがそれまで手を出していなかった分野。早速情報収集を進め、エスプレッソマシンメーカーを選定する中で出会ったのが、イタリアの Sanremo でした。同社の特徴はバリスタ・チャンピオンや、技術者、トレーナーなどのコーヒープロフェッショナルからなるスペシャルチーム「S.W.A.T.」。業界の最前線に立つメンバーが製品開発のあらゆる工程に関わる仕組みに感銘を受け、同社と手を組むことが決まりました。

 

メンテナンスの重要性

ここまで駆け足でブルーマチックジャパンの歴史を振り返ってきましたが、扱うマシンやそれが使われる場所を問わず、コーヒーマシンビジネスにはある共通点があります。それはメンテナンスの重要性です。老若男女が利用する新幹線やコーヒーチェーン、さらには 24 時間営業のコンビニなど、ブルーマチックジャパンがこれまで製品とサービスを提供してきた顧客は、スペシャルティコーヒーの世界で繰り返し耳にする一貫性と再現性を何よりも重視する業種でした。

その荒波に揉まれる中で体制を築いてきた同社のメンテナンスサービスチームは、現在コールセンターだけでも常時約 10 人を擁する大所帯に。顧客からの電話は 365 日 24 時間コール受付対応で、その応答率は 95% にまで登ります。さらにコールセンターのスタッフも技術的な講習を受け、修理や高度な知識が不要な相談内容であれば、電話を受け取ったオペレーターがその場でサポートできるうえ、専門的な内容を把握したテクニカルスタッフもコールセンターに常駐しています。また海外メーカーから輸入した製品はブルーマチックの専門スタッフが出荷前に点検し、一部の部品は必要に応じて日本の環境に合わせて交換されます。修理用のスペアパーツは常時 3,300 種が保管されているので、海外から必要な部品が届くまで待つ必要もありません。スペシャルティ市場への参入にあたり、一時は選任バリスタの採用を検討したものの、顧客から「ブルーマチックの強みはサポート体制にある」という話を聞き、既存の強みをさらに強化する方針を決めたと同社は言います。

中でも彼らが重視しているのは、顧客のマシン 1 台ごとに管理している電子カルテです。そこにはいつマシンが導入され、これまでにどんな保守点検作業を行ってきたかが記録されているので、問い合わせ内容以外にもどんなサポートが必要そうかをすぐに把握できるようになっています。またスピードを重視するあまり再修理が発生することのないよう、例えば、マシンの使用期間が長い顧客には発生事象のみならず、その後に発生する可能性のある事象を未然に防ぐという施策がとられています。その背景にはメンテナンススタッフは単なる作業者ではなく、メンテナンス「サービスマン」であるという考えがあるのです。

 

昨今はコンビニやチェーン店でのコーヒー提供が当たり前となり、手軽においしいコーヒーが飲める時代となりました。そんな中、日本全国どこでコーヒーを飲んでも統一された味を提供するために、マシンの構造や特性、経験を活かした「調整力」が求められています。そしておいしいコーヒーが抽出できるコーヒーマシンを安心安全に利用できるよう、アフターフォローまで含め顧客をサポートするのがブルーマチックのビジネスなのです。

コーヒーマシンのある社会を目指す、ブルーマチックジャパンの軌跡。

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