#26: 灯台もと暗し

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

数日前に、「The 'Future Book' Is Here, but It's Not What We Expected(未来の本はここにある。想像していたよりも違った形で)」と題されたWIREDの記事を読みました。未来の本と聞くと、インタラクティブで、読者の要望にバシバシ応えてくれるようなものを想像しますが、本の見た目はそれほどかわらずとも、世の中に送り出す方法に大きな変化が起こっていて、すでに私たちは未来の本を手にしているんだとか。

ここでいう本とは狭義の書籍ではなく、紀元前からあった記録媒体(=メディア)全般。同記事では、私たちはすでに「メール、ツイート、YouTube動画、メーリングリスト、クラウドファンディングのキャンペーン、PDFから.mobiへのコンバーター、Amazonの倉庫、そして香港などで急増する廉価なオフセット印刷サービスを提供している印刷会社」などの未来の本を手にしていると書かれています。

こういった様々な「本」の出版を後押しするサービスや仕組みのおかげで、独立系の媒体が次々に誕生しています。コーヒーというニッチなテーマで雑誌を出版するStandartもまさしくそのひとつ。つまりあなたが手にしているStandartは「未来の本」なのです。今週は、京都のKurasuがスタートするメディア・アプリのKOHIIや日本茶メディア「Re:leaf Record」など、チェックしておきたい新しいメディアもアナウンスされました。進化し続ける「本」のこの先をもっと見てみたくなりますね。

今週のStandart Japanは少しリラックスムード。明日から次号のリリースに向けた準備や16号のコンテンツ選定を行っていきますよ。

Team Standart Japan

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

Pieces for Peace

農園の生産性を20~30%向上させ、世界の飢餓を約12~17%減少させる——こんな大きな変化を起こすために必要なことって何だと思いますか? 実はこれらは女性生産者に男性と同等の農業資源を保証することで期待される効果です。ジェンダーギャップが気候危機における女性の苦境に繋がるように、ジェンダー、気候変動、経済格差などあらゆる社会問題は相互に作用し合っているのです。
 
コーヒー農園における肉体労働の70%を女性が担っているにも関わらず、その多くはリーダー職には就けず低賃金労働を強いられ、経済的不安定性から貧困や飢餓の危機に直面しています。コスタリカでバリューチェーンの公正化を目指す非営利団体Bean VoyageSunghee Tarkさんは、本誌最新号の中で生産地のジェンダーギャップの根絶に向けたジェンダー問題へのアプローチについて語っています。女性生産者への経済的独立に向けた教育支援や、生産者同士の対話を通して問題を共有しその解決策を探るサポートを提供している同団体の活動は、ジェンダーにまつわる差別や偏見、格差を個人の問題として捉えるのではなく、そこから見えてくる構造的な不公正へと目を向けなければいけないということを教えてくれます。

私たち一人一人がジェンダーギャップを生み出す構造の一部である事実を受け止め、意識の変容と行動を起こすこと。社会全体の平和には、全体幸福の実現に向けた個人の意識変容が不可欠なのです。

Think Globally, Drink Locally

オランダ・アムステルダム市長が、旅行客による市内の「coffee shop」の利用を禁止する法案を提案。「なんで!?」と思われたかもしれませんが、実はオランダで「coffee shop」とは大麻等のソフトドラッグ販売店を指しており、 法的に許容されている大麻を求めてオランダを訪れる「Soft Drug Tourism (ソフトドラッグツーリズム)」 がこれまで物議を醸していました。件の法案が可決・施行されると、市内ではオランダ住民のみがcoffee shopを利用できるようになるそうです。
 
この背景にはオーバーツーリズムに起因する現地住民の被害が挙げられます。人口85万人のアムステルダムにコロナ以前は年間2000万人もの観光客が訪れており、ドラッグ消費を主な目的に観光する人々がその58%に及ぶとの推計も。一般的に旅行者は「現地の生活」を求める一方、オーバーツーリズムは景観の毀損や騒音・迷惑被害、家賃高騰を引き起こし、本来の目的である現地の生活そのものの喪失に繋がると問題視されています。旅による恩恵は測りしれない一方、現地文化へのリスペクトや住民への配慮といった意識こそ、旅を楽しむための何よりの準備ではないでしょうか。
 
今日のパンデミックによる経済被害は、コーヒーショップ(私たちになじみ深い方)のような地域を彩る「a place of gathering (社交の場)」の喪失を招いています。こちらのSwitch Coffee大西さんの投稿にもあるように、移動の制限によってあらゆる「目的地」が遠ざかる中、常に日々の居場所という目的地を与えてくれる近所のコーヒーショップは、私たちの生活に無くてはならない存在ではないでしょうか。今日もまた、地元に根ざすスペシャリティを味わいましょう。

 

その他の気になるニュース

▷ フランスの農業研究機関がアラビカ、ロブスタ、リベリカに続く、新たな原種の栽培作物としての可能性を研究中。カッピングでは高評価を得ており、今後品質基準を満たせば栽培面の査定に移る予定。

▷ スターバックスが米国でミートレスマンデー (肉なし月曜日)に注力。肉食に起因するCO2削減に向け、毎月曜日にベジタリアン朝食メニューを2ドル引きで提供するとのこと。

▷ 2021年もコーヒー先物価格(Cプライス)は上昇の見通し。嬉しい知らせに聞こえる一方、実際は気候変動によるブラジル・ベトナムの供給量減少が要因であることから、コーヒー農家の早急な保護が必要とのこと。

▷ Sprudgeいわく”2021年度最も誤ったコーヒー記事” 、『二杯目のコーヒーは常にまずい』という意見にあなたは同意しますか? 現在「1日で一番おいしいコーヒー」に関する投票を受付中。ちなみに選択肢は1杯目、2杯目、25杯目、その時点で飲んでいるコーヒー。

▷ シドニーのミドル港近海で長年親しまれる小型ボートのコーヒーショップは、豪州元首相も訪れる地元住民御用達のスポット。地元のコーヒーショップを探すときは、海上の確認も忘れずに。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

ANY B&B + COFFEE
奈良

物語を宇宙まで。ANYは「物語を紡ぐ場所」として2019年9月にオープン。コーヒーは人を育み、繋がりを生み出す不思議なモノ。 物語を共創できる場所としてコーヒーを通じて見える世界、環境、暮らしを考え、感動を共有するANYは、古都である奈良から個性溢れるコーヒーと未来への物語をお届けしています。店舗2階には1日1組限定のお宿も。

生産者
 Eduardo Pinheiro Campos
生産地域
ブラジル ミナスジェライス州セラード地域 (地図
品種
Mundo Novo , Catuai
精製方法
ナチュラル
テイスティングノート

パパイヤ、アプリコット、マンゴー


Standartの感想:
図らずも先週と同じ生産者でしたが、香りから味わいまで異なるコーヒーで驚きました。マンゴーや熟したバナナのような南国果実とカカオが強く香り、フルーティなぬか床のような芳香も。口に入れた時のクリーンな味わいと、マンゴーとパイナップルを頬張るような贅沢感、そして少し温度が下がってきた時の柑橘系のマイルドな酸味と甘さのバランスが心地良すぎて、心も体も満たしてくれる「これちょうどいいぃ〜感」がそこにあります。ベトナム産Bean to Barチョコレートを初めて食べた時の衝撃と感動を思い出し、長く続く余韻にひたる幸せな時間を過ごせました。

 


Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

SHOE DOG -- 靴にすべてを | フィル・ナイト
詳細

新年明けてからの1冊目に読もうと思い取ってあった、NIKEの起業までのストーリーを創業者が語るSHOE DOG。元旦から一気読みでした。NIKEは日本と深い関係があったことを知っている方も多いかもしれませんが、NIKEは元々、日本のシューズメーカーであるオニツカ(現アシックス)のアメリカ代理店としてスタートしました。当時はNIKEではなくブルーリボンスポーツ社という名前。ストーリーは、元トラックランナーで創業者のフィル・ナイトが日本の質が高く価格も安いスポーツシューズをアメリカで販売するというビジネスを始めるに至った回想シーンからスタートします。莫大な借金をしながら自転車創業で拡大していくビジネスの経営に何度も何度も頭を悩ませ諦めかけながらも、アスリート精神と靴や仲間への愛情で乗り越えていく姿に、胸が熱くなります。NIKEの倒産を救った日本の商社の活躍も見逃せません。経営者の苦悩や決意に学ぶことも多かったのですが、ブランドとは?という問いの答えを見つけることができ、そして自分の人生を生きるということに深く向き合うことができる一冊でした。最後にグッときた一文を。

「馬鹿げたアイディアだと言いたい連中にはそう言わせておけ……走り続けろ。立ち止まるな。目標に到達するまで、止まることなど考えるな。"そこ"がどこにあるのかも考えるな。何が起ころうと立ち止まるな。」

- Toshi



絵本 | 谷川俊太郎
詳細

谷川俊太郎の詩と彼自身が撮った写真からなる、1956年に初版が発行された写真詩集。詩のテーマは多岐にわたるものの、写真のモチーフはすべて、手。まず気づかされるのが手の雄弁さです。考えてみると、手にはその人の歴史や性格が表れるし、所作まで含めるとかなりの情報を伝えられるものだな、と。でも決して確定的ではなくて、あくまで想像を促すだけ。そんな手の写真が詩に加わることで、谷川俊太郎が見ている風景がもしかしたら自分にも見えてくるのではないかという期待が膨らんできます。この本に収められた17篇の中で僕が気に入った「祭」という詩の一節を(無粋と承知のうえで)紹介します。この本を読んだことがない人は、どんな写真が隣にあるのか想像してみてください。

からつぽの家の中では
牛乳壺がひつくりかえつたまま
妹のふだん着には少女の匂いが残つたまま
一日は置きざりにされてひとりで暮れてゆく

- Atsushi


Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

及川 準基 aka Jay

フリーランスのバリスタ。メインはLITTLE DARLING COFFEE ROASTERSにいます。休日は文庫本とお気に入りのタンブラーを持って出かけるのが好き。大体映画館に行きがち。

セットアップ:

抽出器具:HARIO V60
豆量:15g
湯量:225g
挽き目:中挽き
抽出温度:90〜95℃
抽出時間:2:00〜2:30


手順:

  1. 1投目 30g注ぐ、30〜40秒蒸らす
  2. 2投目 60g注ぐ、落としきる
  3. 3投目 60g注ぐ、落としきる
  4. 4投目 75g注ぐ、お湯が落ちきったらドリッパーを外す
    ※店舗のレシピとは異なります

 

ポイント:

▷ お湯を注ぐ時、ドリッパーの中でお湯がどのように流れているかを意識する。
▷ 適正抽出を心がけながら、その豆の引き出してあげたい部分を意識して注ぎ方を変える。
▷ レシピはあくまでも目安。スケールの数字に捉われ過ぎないように。

一言:

心がけていることは、感動を与えられるような1杯になればいいなと。人生で初めて浅煎りのコーヒーを飲む等、その人の初体験に携われた時はいつも以上に気合いを入れます。その人の今後のコーヒーライフを左右するその1杯は責任重大で、バリスタの最大の腕の見せどころだと思っています。喋りすぎるのが玉に瑕(気をつけます)。

 

 

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今週の Weekend Brew は Standart Japan 第14号スポンサーの Victoria Arduino x トーエイ工業、パートナーの MiiR JapanBarista Hustle JapanSucafina のサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan 

#26: 灯台もと暗し

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