おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?
今週は、以前のニュースレターでもご案内していたエスプレッソマシンメーカー FAEMAの体験会とStandart Japan最新号のローンチパーティが、東京で開催されました。
FAEMA体験会当日は関東広域が大雨で、東京も例に漏れずに大雨。イベント中は雨足が強くなるばかりでしたが、それにも関わらず朝からコーヒープロフェッショナルをはじめ、業界外の方も多く訪れていました。
イベント中には、Standart Japan 19号のMeet Your Guestでインタビューさせてもらった万美さんのパフォーマンスもあり、さらにStandart Japan 11号のMeet Your Guestで登場いただいたEat & Taroさんと一緒にお話しするトークセッションも開催。インタビュー記事にも出てきた、おいしさの価値やアートの価値をテーマに、Taroさんの活動や疑問、そしてコーヒー業界の動きと照らし合わせながら考えてみる時間になりました。会場となったLittle Darling Coffee Roastersさんの開放的な空間も最高でした!イベントの様子はこちらから。
そして、最新号ローンチパーティでは、読者の方々やそのお連れの方をSingle O Hamachoにご招待して、コーヒーやビールを片手に皆さんと一緒に乾杯!!お久しぶり&初めましての方々が会場に訪れ(大阪や埼玉や神奈川からも!)、それぞれ皆さんとお話しすることができ、とても良い時間になりました。読者の皆さん同士がお隣の方たちと意気投合して仲良くなったり会話したりする姿を見ることができ、もう、感無量でした。お時間を作ってわざわざ会場に足を運んでくださった方、本当にありがとうございました。次回はどこの都市で開催できるのか、楽しみです。イベントの様子はこちらから!
それでは今週も良い週末を!
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
サステナビリティの乖離
アドボカシー団体「ルーラル・ボイス」が、米国のコーヒー消費者150人とホンジュラスのコーヒー農家100人を対象に、コーヒー生産におけるサステナビリティの意識調査を行いました。この調査は、今年4月に開催されたスペシャルティコーヒーエキスポ2023のサステナビリティ・ディスカッションの場において、消費国だけでなくコーヒー農家の声も反映されるべきだ、という問題意識から実施されました。そしてこの調査結果から、消費者とコーヒー農家の間で、サステナビリティについての大きな意見の乖離が生じていることが判明したそうです。
まず「コーヒー業界におけるサステナビリティの推進は、コーヒー農家の利益に繋がると思うか?」という質問に対し、米国消費者の78%が「そう思う」と答えた一方で、コーヒー農家の回答はわずか31%。「コーヒー産業の未来を考える上で、特に重要なサステナビリティの要素(環境、社会、経済)はどれか?」という質問に対しては、消費者グループでは環境的要素、農家グループでは経済的要素に回答が集まりました。また、コーヒーの生産に関わる各項目の重要度を問うたところ、消費者側はジェンダー平等、農業従事者の労働環境の比重が、コーヒー農家側は気候変動とそれに伴う移住、取引における適正価格の比重が大きくなったと報告されています。本調査が限られたサンプル数をもとに行われた点を考慮しつつも、こうした見解の相違は、バズワード化する「サステナビリティ」の本質を考える上で重要な論点だと言えます。
また記事では、サステナビリティ関連のイニシアティブの設計・結果の評価において、多くの場合、農家や農業従事者の視点が抜け落ちているとの指摘も。コーヒー業界におけるサステナビリティ向上の鍵は、農家や農業従事者を含むすべてのステークホルダーの声に耳を傾けること。その姿勢が、今日より一層求められています。
気になるニュース
▷ アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)が、インドネシアの小規模コーヒー・カカオ農家を対象に、アグロフォレストリー農法の浸透を目指す11億円規模の大型プロジェクトを発表。気候危機の最前線にいる小規模農家への農業トレーニングを通じ、収穫量拡大と栽培地の自然環境の保全を目指すとのこと。
▷ ウガンダで、長年延期されてきた鉄道建設が今年中に開始される見通し。首都カンパラから隣国ケニアとの国境までを結ぶ全長273kmの鉄道は、その後インド洋に面するケニアの港町モンバサに向かう路線とも連結する予定。ウガンダ産コーヒーの輸出プロセスの効率化に期待が高まります。
▷ 東京・下北沢のBEAR POND ESPRESSO主宰、田中勝幸氏の波瀾万丈なエスプレッソ道を綴った名著『Life is Espresso』が文庫サイズで復刊。2011年に発表された同書に、新たに書き下ろしエッセイと写真を追加した決定版です。
▷ 先日米・フロリダ州のとあるカフェで、ラテアートならぬ「コルタードアート大会」が開催。コーヒーカップのサイズと反比例し、会場のボルテージは最高潮。ジャッジがエアロプレス大会式なのもいい感じ。
▷ コーヒーメディア「スプラッジ」の“レシピ”によると、旅行先で洗濯に困ったときにも、フレンチプレスがあれば下着だって洗えるらしい。少々刺激が強いので、動画視聴の際にはご注意を。そしてもう一つ、フレンチプレスにはなんの罪もありません。
物足りないあなたへ
豪州のマックカフェが30周年を記念し、豪州全土でコーヒーの無料配布を実施。コーヒーライター、フォトグラファー、コンサルタントとして活躍するジェン・チェン氏が、11年間のフリーランス生活を経て現在も取り組んでいる11の習慣。
コーヒーイベント
▷ 岩手:Iwate Coffee Festivalが開催!(6/3&4)全国から素晴らしいショップが集まります。本日まで!
▷ 宮城:SENDAI COFFEE FESが開催!(6/10&11)テーマは「LOCAL FIRST」。東北のコーヒーを東北の人が楽しむコーヒーフェスになるそうですよ!
※日本各地で開催されるコーヒー関連のイベント情報を募集しています! Standart CommunityやInstagramのDMやメール(hello@standartmag.jp)でぜひシェアしてください!
What We're Drinking
今週のコーヒー
SHRUB COFFEE 三重(地図)
三重県桑名市にロースタリー、愛知県名古屋市にコーヒースタンドを構える、生産者との繋がりを大切にしているコーヒー専門店です。
生産者:セルヒオ・ノエ・オルテス氏
農園:カサブランカ農園
生産地域:ニカラグア ヌエバ・セゴビア県ディピルト地域(地図)
品種:パカマラ
精製方法:ナチュラル
テイスティングノート:ライム、グレープフルーツ、葡萄
編集長のコメント:
今年に入ってまだニュースレターではテイスティングしていなかったパカマラ。このコーヒーはSHRUB COFFEEの店主である野村さんが、過去に一年ほど住み込んでいた思い入れの強い農園のもの。真面目で優しく、頑張り屋のセルヒオさんが生産しているコーヒーだそうです。一年も農園にいらっしゃったということで、どんな生活をされていたのかなと思いを巡らせながら準備を進めます。パカマラ特有の大ぶりな豆に改めて「おっきいなぁ」と声をかけたりしながら豆を挽き、ナチュラル精製のコーヒーを思わせる甘くねっとりとした果実のような香りがあたりに広がります。カッピングの準備ができて一口目を啜ると、香りから想像していたよりも鮮やかな酸を一瞬感じ、そこからドッと甘さととろみのある質感が飛び込んできます。フラッシュバックしたのは、以前イタリアに旅行した時のこと。モンフォルテ・ダルバ村からバローロ村に歩いて向かう道中のヴィンヤードを歩いていた時にちょっと食べさせてもらった葡萄。甘さが強く、それでいて軽やかでベタつかず、気持ちのいい酸味があり、ほんのわずかに残るハーブや野草の香り。思い出した舌の記憶に懐かしさを感じながら、温度が下がってくるとより濃厚に感じるブドウジュースのようなコーヒー、素晴らしかったです。ごちそうさまでした。飲んでみたい方はこちらから。
What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること
今週のStandart Communityでは、コーヒーZINE制作のため、音楽とコーヒーに関するアンケートが共有されました。様々な異なるジャンルの音楽を聴き、直感で一番合いそうなコーヒーを選ぶ、というとてもユニークな内容。回答された方々もとても楽しまれた様子でした。
ちなみに、回答はまだ受付中とのことですので、ぜひこちらのアンケートフォームからご協力ください!
※Standart Japan定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
『COMING OUT OF THE FOG』
主に1979年から2014年に中国で行われた一人っ子政策の時代に生まれ、養子として迎えられイギリスで育った7名の女性の物語が描かれたインディペンデントマガジン。作者のZoe Lowdermilkさん自身も一人っ子政策時代に中国で生まれ、イギリスで育った一人。
中国の急激な人口増加に伴い、人口抑制政策として取られた一人っ子政策では、原則1組の夫婦は1人までしか子供を生むことができないとされていますが、実際には様々な理由により、複数の子を授かった女性も少なくはないようです。その結果、孤児となった多くの子供は、後継ぎとなることが少ない女児なのだとか。
そんな時代に中国で生まれ、イギリスの家庭に養子として迎えられ育った7人の女性。それぞれ異なる環境、バックグラウンド、考えを持ちながらも、自身のルーツやアイデンティティを模索しています。思春期に自分が周りとは何か ”違う” ことに気づいた経験や、ヨーロッパでアジア人というフィルターを通して見られること、さらには自分のルーツを受け入れ生きていくことがどれほどのものであるのか、計り知れません。
タイトルにあるように霧がいつか消え、彼女たちの人生が豊かなものであることを強く願い、また、自分のルーツについても考えさせられる作品でした。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
岩村 汐遠 aka Will(職場でのイングリッシュネーム)
大阪生まれ。高校生の時にコーヒーに興味を持ち始め、カフェの専門学校に入学。卒業後は地元大阪でレストランに就職し、バリスタ兼バーテンダーとしてコーヒーやカクテルを作りながら、サービスマンとして働く。現在は原宿のdotcom space Tokyoのヘッドバリスタとしてスタッフの育成やクオリティの底上げに努める傍ら、コーヒーの競技会にも出場している。
5 questions
今気になっている問いは?
「自分が淹れたそのコーヒーは誰が飲んでも美味しいと感じるかどうか」
僕の理想はコーヒーが苦手な人でも、ミルクや砂糖を入れずに飲めるコーヒーです。ポジティブな要素を追求した上で、ネガティブな要素を極限までカットしたクリーンで甘いコーヒーであれば、きっとバリスタだけでなく、普段コーヒーを飲まない人が飲んでも美味しいと感じるはず。そんな「普遍的な美味しさ」のようなものを常に自分に問いながらコーヒーを淹れています。
お気に入りの場所は?
この機会に改めて考えてみて気付いたのですが、歩道橋です。高校生時代、通学路で1番足を止めた場所だったなと。時間帯によって見える景色が全然違う上に、動く街並みのようなものが一番程良い距離感で見つめられる気がして。今でも考え事をするときや1人になりたいときは歩道橋を歩きます。
譲れないこだわりは?
「カレー作りはスパイスから!」
料理が趣味なのですが、作っていて一番楽しいのはスパイスカレーです。使うお肉の種類に合わせてスパイスの配合を考えている時間は至福の時間です。
今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?
「父親」
実は僕がコーヒーを始めたのは、父の持つコーヒーミルを勝手に使ったのがきっかけ。深煎りのブラジルやグァテマラなんかを飲みながら少し話がしたいです。
あなたのギルティ―プレジャーを教えてください。
夜通し読書やゲームをすること。真夜中の感受性が豊かになる感じが好きで、深夜から朝方にかけて思いっきり趣味の時間を作るのが一番の楽しみです。翌日が休みの日限定ですが…(笑)
Fancy a refill?
編集後記
先日、映画『TAR/ター』を観てきたのですが、色んな意味で衝撃的でした。主演ケイト・ブランシェットの圧巻の演技によって展開される、重層的なストーリー。さまざまな方向から感情が引っ張られるような不安定な浮遊感。そしてあの衝撃のラストには、思わず「なんだこれは…」と、見終わって数日間は余韻を引きずっていました。今年見逃せない作品の一つかと。だれかと感想を語り合いたい。
Takaya
今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第24号スポンサーのTYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、Swiss Water、Faema x DKSH、Fellow x Kiguのサポートでお届けしました。
LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)