#137: 声、レース、コーヒー

#137: 声、レース、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

今週は、ブルーボトルコーヒーの創業者であるジェームス・フリーマンさんがクリエイティブ・アドバイザーとして監修した、同社のグローバルプロジェクト「Blue Bottle Studio」を体験するために、一泊二日で京都へ行ってきました。ジェームスさんにお会いするのは久しぶり。(お土産で、福岡名物のにわかせんぺいを渡してきました😬

南禅寺にある店舗に伺うのは2回目でした。はなれの2階に続く入り口の暖簾をくぐり、螺旋の細い階段を上がっていくと現れた8畳程度の茶室のような畳部屋。漆喰の壁とライムグリーンを要所で使い統一された空間は洗練されています。レコードプレーヤーからは音楽が流れ、下階からの雑踏の音も心地いいです。4人がゆっくりと座れる程度のカウンターに腰をかけると、ジェームスさんと品質担当のベンジャミンさんが、素晴らしいコーヒーのコースをサーブしてくれました。

Standart Japan 7号でBen Wurgraftさんに執筆していただいたブルーボトルコーヒーのストーリー「青の時代」に『事業の拡大と両立できるミニマリズム』という表現がありましたが、グローバルプロジェクトと言うにはとてもこじんまりとした空間とコーヒーコースのプレゼンテーションからは、今も変わらないブルーボトルの思いを感じ取ることができました。

音楽は誰のチョイス?と質問すると、ジェームスさんとベンジャミンさんが来日してまず、ジャパンチームと一緒にレコードの買い出しに行ったそう。大きな会社にはどこかそぐわないような人間味あるエピソードに、ほっこりしたのでした。京都に行く機会があれば(もしくは在住の方は)、ぜひ。

そしてこの旅では、Standart Japanでお世話になった方々や読者にもたくさん会えました。コーヒーショップでおすすめしてもらった場所に食事へ出かけ、ずっと行ってみたかったお店にも足を運び、短い時間でしたが桜満開の京都を満喫してきたのでした。Instagramのストーリーで京都での様子を少しアップしているので、よければチラ見してもらえると嬉しいです。

それにしても京都の観光客の数はとんでもなかったです。伺った先々のコーヒーショップはどこもひっきりなしにお客さんが訪れていました。

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi

 

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

よりフェアなトレードへ

先日フェアトレードインターナショナルが、認証コーヒーの最低取引価格の引き上げを発表しました。これにより、フェアトレードコーヒーの約80%を占めるアラビカ種(ウォッシュト)の最低取引価格が、1ポンド当たり約185円から約238円へと引き上げられることに。またロブスタ種(ナチュラル)は、1ポンド当たり約159円と8円の値上げが予定されています。さらにオーガニック認証も得ている場合、合計値上げ幅は1ポンド約13〜17円に上ります。世界的に進むインフレに加え、生産コストの急激な上昇や気候変動による収量減など、経済的リスクが高まるコーヒー農家たちへの支援策として今回の値上げに至ったとのこと。なお新しい価格は今年8月1日以降の契約から適用される予定です

取引最低価格には、コーヒー先物価格(Cプライス)が下がったとしても、一定の価格を保証するという目的があります。昨今のコーヒー価格の上昇によって、農家の収益が増えているかのような印象を受けますが、実際その大半が農家に還元されていないのが現状です。ある研究によれば、コーヒーの小売価格のうち、農家が受け取る収益は約1%程度。以前のニュースレターでご紹介したように、Cプライスが不安定だと、未成熟なコーヒーチェリーの収穫を助長して品質低下を招く可能性があるうえ、生産者協同組合の負担も増えるといわれています。以上を踏まえても、今回フェアトレードが発表した最低価格の引き上げには、大きな意義があると言えるでしょう。引き続きこのニュースレターを通じて、価格変化の社会的インパクトを追っていきます。

 

気になるニュース

▷  サウジアラビアが、国際コーヒー協定(ICA)に正式加盟今後10年間で国内のコーヒー収穫量約8倍増を目指す同国の意気込みがうかがえます。

▷ オニキスコーヒーラボの共同創設者アンドレア・アレンさんの、2021年バリスタチャンピオンシップ出場までの軌跡を描いたドキュメンタリー「ロード・トゥ・ミランのトレーラーが公開されました。

▷ ラバッツァが、クルーズ会社プリンセスクルーズの公式コーヒーパートナーに就任。先日同社は、自動車レース「オーストラリアグランプリ」のスポンサー契約も結んでおり、ブランディング強化と大手卸売先の新規開拓に注力している模様。

▷ ベーカリー&カフェチェーン、パネラ・ブレッドがロイヤルティ会員限定でアマゾン・アレクサを介したボイスオーダーシステムを開始。自宅で気軽に「コーヒー飲みたい」と呟けなくなりそう。

▷ ハリウッド俳優のペドロ・パスカルが注文したコーヒーが、TikTok上で話題に。ドリンクのラベルに書かれた「ベンティサイズ、アイス多め、エスプレッソ6ショット」の文字に、ソーシャルメディア上では驚愕と心配の声が上がっています。

物足りないあなたへ

オートリーがオーストリアのマックカフェとパートナーシップを締結。バルセロナを拠点とするコーヒースタートアップ「グッドニュース」が、B corp認証を取得コーヒーフォトグラファー兼フィルムメーカーのルシア・バウォットさんが手がけるフォトブック「We Belong」のプレオーダーが開始しました。

コーヒーイベント

 高知県:Kochi Coffee Festivalが高知 蔦屋書店テラスで開催!(4/2)

▷ 東京:Coffee trip festが松坂屋上野店6階で開催!(4/5~10)

▷ 和歌山県:高野山とふもと ジャパンコーヒーフェスティバルが、和歌山県で開催! 南海高野線の橋本駅〜高野山駅の各駅にコーヒーショップがポップアップ。電車を乗りながら旅して飲み比べできるそうです。

日本各地で開催されるコーヒー関連のイベント情報を募集しています! Standart CommunityやInstagramのDMやメール(hello@standartmag.jpでぜひシェアしてください!

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

hikure. 愛知(地図

2022年4月にオープン。愛知県豊川市にて、 ’日が暮れるまでの溜まり場’ をコンセプトにコーヒーを取り巻くライフスタイルを提供している、ロースター兼カフェです。一杯から始まるコミュニケーションを大切に、スペシャルティコーヒーのみをこだわりを持って焙煎しております

 

生産者 ワチュリ生産者組合

生産地域:ケニア ニエリ地区イテカウノ(地図

品種ルイル11、SL28

精製方法フリーウォッシュト

テイスティングノート
ピーチ、パパイヤ、ライム、ミルクキャラメル

編集長のコメント:

ワチュリのコーヒーは、WBで3年近く前に飲んだっきりでした。久しぶりの再会にジーンときます。花の香りが漂うコーヒーを啜ると、青リンゴがドンと目の前に浮かびます。ジューシーな酸味はイキイキとしていて、甘さのあるレモンも感じました。そこに刺々しさはなく、元気いっぱいな少年少女を思わせてくれるハツラツさがあります。とろりと感じる液体はやさしく甘く、桃や洋梨のニュアンスも。あと、最近食べたばかりの桜餅の葉っぱを思い出させてくれました。ブラックティーのような後口は心地よく長く続きます。これからの季節、アイスでも本領発揮してくれそうです。ケニアやっぱり美味しいなぁ〜〜。ごちそうさまでした! 飲んでみたい方はこちらから

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること

 

今週のStandart Communityでは、Standart Japan制作統括のAtsushiが、ポッドキャスト『ゆる言語ラジオ』のおすすめシリーズを紹介していました。このシリーズでは、全5回にわたって言語学や認知科学の視点から、「食レポ」について紐解いていくというもの。コーヒーテイスティングにも通ずる情報も多く、気になる方は是非チェックしてみてください😆

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

ピンヒールははかない

これまで何度かInspirationでも登場した、ニューヨーク在住でファッションから政治問題まで幅広いジャンルで執筆するライター佐久間裕美子さんの著書。本屋さんのイベントで古本をたまたま手に取り、ちょうど彼女の出版しているZineのWe Act! を読んだ後だったので即購入しました。ニューヨークに住む佐久間さんや彼女の周りの女友達たちのライフスタイル、人生観などが綴られていて、テーマは考えこむものも多い内容でしたが、軽快な語り口で一気読みできるエッセイでした。(ニューヨークで生活する女性、しかもライターと聞くと、世代的についセックス・アンド・ザ・シティのサラ・ジェシカ・パーカー演じるキャリーを想像してしまいました...)女性として生きていく上での苦悩や葛藤が彼女の経験や友人たちの人生から語られていますが、女性に限らず共感する部分が多くあります。生きるということ、家族を含む自分以外の人との付き合い、自分らしくあるということを、私はどう考えているのか、どうしたいのか、深く考えるきっかけになりました。佐久間さんがこの著書の出版時にインタビューに答えていたこちらのWEB記事も、本の内容のエッセンスが詰まっていて良かったです。インタビューを読んで興味が出た方は、著書もおすすめします。

     

    Brewing with…
    あの人のコーヒーレシピ 

     

    西田 康孝 aka ニシくん

    岡山県倉敷市生まれ。YIRGA COFFEE ROASTER オーナー焙煎士。「音楽界隈(レゲエDJ&バンド&イベントオーガナイザー) →ダイニングバーでのオーナーシェフ→Standup paddle board(SUP)の選手→山岳アスリート(スカイランニング,山岳スキー) →珈琲界隈」、と変わった遍歴を持つがSUP時代にショップオーナーに珈琲焙煎(手網)を見せられ感動。手網(銀杏煎り用)→1kg手回し→ハマ珈琲1kg焙煎機と至る。アスリートの体力と料理経験からの味覚、フットワーク軽く、繋がる、繋げる為の珈琲を各地に届けるように日々勉強奮闘中。現在は出店のみの営業形態で岡山県内外、様々な場所で出店しています。

    5 questions

    今気になっている問いは?

    「鮮度か、エージングか?」

    コーヒー業界で解明されていない、いつ頃が飲み頃か、自家焙煎珈琲屋さんとして鮮度は当たり前として、「どの産地の、どの精製方法の、どの焙煎度の」を把握しつつ、後は豆との対話が必要だと思ってます。

    お気に入りの場所は?

    山や自然が好きなのですが、伯耆大山山系(中国地方最高峰の山系。台形の大山山系は見る角度により表情を変える)が好きです。とても古い山なのですが姿形に威厳があり、見るものを魅了し、自分はちっぽけな存在なんだなと認識させてくれます。

    譲れないこだわりは?

    出来るだけ無添加生活(味覚保持)。ニオイが強すぎるものを避ける(嗅覚保持)

    今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

    現地の生産者さんと一緒に珈琲飲めたら嬉しいな。

    あなたのギルティープレジャーを教えてください。

    珈琲の仕事してるけど、お茶も好きです。珈琲の前は茶道(裏千家)を習ってまして御免状もいただいてました(初級ですが)。お茶もコーヒーも大好きです。日本は茶道の文化があるから所作が似てるドリップコーヒーが愛されてるのでないかなと思っています。

     

    Fancy a refill?
    編集後記 

    僕の頭の中は汚い部屋みたいな状態にあるんじゃないかと感じることがちょくちょくあります。

    先日、知人に薦められて読んだ、藤子・F・不二雄の『異色短編集』がめちゃくちゃ面白くて、一部の作品はスーツを着た男の人が「ドーン!!!」ってやる“あの”マンガに繋がったんじゃないか……? と考えていました。

    いや、でもあれは藤子不二雄Aじゃなかったっけ?と不安になり検索してみたんですが、表示されるのはまったく関係ない情報ばかり。不思議に思いつつ、藤子不二雄Aで検索し直すとその作品名が表示され、やはり作者はこっちだったか……と一安心。なぜ先ほどの検索では関連情報が出てこなかったのか、ブラウザの<戻る>ボタンを押して確認すると、「笑うさらりぃまん」と検索していた形跡が。ご丁寧に「い」は小文字で。こういう同カテゴリーの言葉がうまく引き出せないことがよくあるんですよね。

    言い間違いに関しても、サウナで熱した石に水をかけるあれが「ろうりゅう」なのか「りゅうろう」なのかいつもわからなくなるし、「白湯」という漢字を目にすると、どうしても「ぱいたん」と読んでしまい、そっちを一回経由してからでないと「さゆ」という読みが出てきません(これに関しては本当に意味不明)。

    そのうちWindowsとThe Doorsを言い間違えるレベルになってしまうんじゃないかと気が気じゃない。

    Atsushi

     


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    今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第23号スポンサーのComandante、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAProbat x DKSHMiiROATSIDEのサポートでお届けしました

    LOVE & COFFEE✌️
    Standart Japan
    (執筆・編集:Takaya & Atsushi)