#125: ビートル、ハスキー、コーヒー

#125: ビートル、ハスキー、コーヒー

新年、明けましておめでとうございます。今週はどんな一週間でしたか?

2023年もこのThe Weekend Brewを通じて、皆さんのメールボックスに毎週一度のコーヒーインスピレーションをお届けしたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いします!

年末年始はいかがでしたでしょうか? 私は、家族とゆっくり過ごし、友人たちやチームのメンバーとオンラインでキャッチアップし、本や漫画や映画やドラマを見て、凧揚げをしたり公園を散歩したりして過ごしたお正月でした。

また、運営している地元のコーヒーショップの2度目の年越しを迎え、年末年始のイベントや大掃除などもやりました。コーヒーショップを運営してみて思うのが、気軽に誰かに会いにいける場所や誰かが会いにきてくれる場所があるというのは、本当に素晴らしいなということです。この年末年始、地域の皆さんや帰省されている方々としっかりとコミュニケーションをとることができ、とても気持ちのいい新年のスタートが切れました。

地域社会と繋がり、地域の人々をほんのちょっぴり幸せにでき、自分も心が満たされ幸福感を味わえる。ビジネスゆえの大変なことももちろん多々ありますが、コーヒーショップという場所は、生きていく上で大切にしたいものがぎゅっと詰まっているなと改めて感じます。そんな思いを胸に、今年もたくさん、コーヒーを飲みに、誰かに会いに、いろんなお店に足を運びたいと思います。

そして最後に!
アメリカのコーヒーニュースサイトSPRUDGEが毎年開催しているコーヒー界のアカデミーアワード「Annual Sprudgie Award」への投票が、いよいよ今週末までとなりました(時差の関係で日本は明日月曜の夕方まで)。昨年活躍した生産者やロースター、新しい製品や取り組み、書籍や記事などを称える賞で、審査はコーヒーラバー達の投票によって決まります。

Standartは今回もBest Coffee Book/Magazineのカテゴリーでノミネートされています。また、以前のニュースレターでもご案内しましたが、Standart Japan 20号で掲載した“Decolonizing The History of Coffee”(コーヒーの歴史の脱植民地化)がBest Coffee Writingのカテゴリーでノミネートされています。さらには、Notable Coffee Producerのカテゴリーで最新号22号の付録コーヒーを生産したインドのプラノイ・ティパイヤ氏ら(Kerehakluエステート)もノミネートされていますよ。

日本からはLeaves Coffee Roasters、Lilo Coffee 、Cafe Imperfect Omotesandoがそれぞれ異なるカテゴリーでノミネートされています。皆さんの清き一票をお願いできると嬉しいです!(投票は終了しました。)

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi

  

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

ギャップの先に見る景色

フードカルチャーメディア「イーター」で、近年著しい成長を遂げているコーヒーブランドの特徴が考察されていました。この記事によれば、ユーチューバーのエマ・チェンバレンさんによるチェンバレン・コーヒーや、以前のニュースレターで紹介したコープレット・コーヒーを筆頭に、20代の若手起業家が中心となって立ち上げたコーヒーブランドにはとある共通点があるそう。それは「スペシャルティコーヒーを、より楽しく身近なものに」というビジョン。

前提として、同記事ではサードウェーブにおける専門性の高まりにともなって、コーヒーの飲み方や抽出方法に関して「正しさ」が強調されるようになったと指摘されています。実際に無数の器具や複雑なレシピによって生まれる心理的ハードル砂糖を入れることやフレーバードコーヒーが軽視されるブラックコーヒー至上主義など、スペシャルティコーヒーのある(時に誇張された)側面にとっつきづらさを感じる人は多くいます。つまり「より楽しく身近なものにする」というブランドビジョンは、“正しいコーヒー”という幻想の払拭を目指しているといえるでしょう。フレーバーシロップポップなコーヒーグッズといった商品からも、その雰囲気が伝わってきます。

デジタルブランド専門のECサイト「コンスーマーハウスの創業者によると、「楽しく身近なものに」というアプローチは、コーヒーに限らずあらゆる商品カテゴリーで観測される傾向のよう。またパッケージについては、これまで主流だったミニマルなスタイルとは一線を画す、カラフルな色使いや大きめの曲線的なフォント、イラストを使用したデザインが近年のトレンドだそうです。変化は日々生じているという現状への謙虚さと、ギャップの先の景色に目を向ける柔軟な姿勢が、今日のブランド戦略において重要なのかもしれません。

 

気になるニュース

▷  2023年度のワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)より、植物性ミルクと牛乳以外の動物性ミルクが使えるように。これまで多くの抗議の声が上がっていた、WBCにおける牛乳(全乳)の使用義務の事実上の撤廃と言えます。その他各種競技会におけるルール改訂の詳細はこちらから。

▷ 米・ハワイ島最南部に位置するカウ地区で、年に一度開催される「カウ・コーヒー・フェスティバル」。昨年12月に開催された同イベントに際して、カウコーヒーの歴史と生産者に焦点を当てたドキュメンタリーが公開されました。約20分ほどのショートフィルムのため、コーヒーのお供に最適です。

▷ オーツミルク企業オートリーが、学園都市を中心にホテルを展開するグラデュエイト・ホテルとの連携を発表。宿泊施設内(レストランやバーなど)におけるプラントベースの選択肢を設けることで、宿泊体験の向上とターゲット層である学生・旅行客へのタッチポイント拡大を図ります。

▷ 今年から台湾のコンビニ、ティーショップ、その他小売店は、製造・提供するドリンクへのカフェイン含有量の表記が必要となります。メニューや食品表示ラベル、もしくはQRコードを通じてのカフェイン情報の公開が義務化される予定で、現在含有量が一眼で判別できるカラー表示の導入も検討中とのこと

▷ フォルクスワーゲン社の1950年製ビートルには、専用の内用電気コーヒーマシンが存在したようです。コーヒー粉末とお水をマシンに入れてシガーソケットに差し込むと、ケトルのようにコーヒーが沸き上がる仕組みとのこと。コーヒーが気になって運転への注意力が散漫になりそう。

物足りないあなたへ

ブラジル発のコーヒーチェーン「ザ・コーヒー」が、750万ドルの調達資金を元手に今年国内外への事業拡大を計画中。世界最北の街ロングイェールビーンにハスキーカフェがオープン。無料ランチの撤廃をはじめ、大幅なコスト削減を実行中のTwitterですが、今のところスナック菓子とコーヒーの無料提供は継続する見通し。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

Dark Arts Coffee 神奈川地図

ロンドン発スペシャリティーコーヒーロースター”飲めば直ちに血となり精力となる”をスローガンに、火・水・魔法の豆の3つのエレメンツを使い、ロンドン本店から受け継いだ錬金術で独自の焙煎を行っています。扱っている全ての豆はシングルオリジン。本来コーヒー豆がもつ素晴らしい味わいを、最大限に引き出した焙煎豆をお楽しみください。

 

生産者 ディエゴ・サムエル・ベルムーデス「エル・パライソ農園」

生産地域コロンビア カウカ県ピエンダモ地区(地図

品種カスティージョ

精製方法ダブルアナエアロビック

テイスティングノート
ピーチ、フレッシュな苺、アプリコット、フローラル、長い甘い余韻

編集長のコメント:

新年一発目のテイスティングです。これまで何度かニュースレターでもご紹介させてもらったことがあるEl Paraiso農園のコーヒー。このロットの精製方法は、「チェリーの状態で48時間、18度の温度下で嫌気性発酵をし、脱果肉後96時間、19度の温度下で再度嫌気性発酵。その後 、40度のお湯で洗った後、12度の水で再度洗います。温度35度、湿度25度の環境下で34時間乾燥させ、水分値11%にして完成」だそうで、かなり複雑な工程を経て出来上がったコーヒーです。その複雑さは香りやフレーバーにも現れていて、豆を挽いてお湯を注ぐとすでに甘いキャンディや黄桃缶を開けた時のような凝縮された芳香が立ち上ります。ライチの皮を剥いた時にむわっと広がる香りを感じながら一口すすると、その剥いたライチを口に頬張るような感覚。ズキュンときます。とにかく香りのインパクトが強いのですが、その複雑な香りから想像させてくれる味わいを回収していくようなフレーバー体験で、香りと味のミスマッチを感じさせません。パッションフルーツやカカオ、ほんのりスパイシーなニュアンスもありました。甘いキャンディが舌にずっと残るような強い甘みも感じます。液体を飲み込むタイミングで鼻腔に上がっていく香りは金木犀。香水のようです。個人的に、温度が落ちてきたぬるめの温度帯が味わいや香りに一体感が出て好きでした。新年を飾るコーヒーにふさわしいとっておきのコーヒーでした。ごちそうさまでした! 飲んでみたい方はこちらから

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること

 

今週のコーヒーコミュニティでは、MÖWE COFFEE ROASTERSの焙煎師まこさんが2023年の初コーヒーについての投稿を行いました。コメント欄からは、お正月を特別なコーヒーと共に過ごされたコミュニティの方々のエピソードも多く散見されました。皆さんの初コーヒーエピソードもぜひ教えてください!

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

First Love 初恋

昨年末に友人に勧められて見始めたNetflixオリジナルドラマシリーズ。宇多田ヒカルさんの楽曲「First Love」「初恋」にインスパイアされて製作されたドラマです。青春時代と現在の異なる時代を行き来しながら20年ほどの忘れられない「初恋」の記憶をたどった男女の物語。青春ものが好きでよく映画を見るのですが、このドラマに惹かれたのはその時代背景。監督の寒竹ゆりさんが同年代ということもあって(宇多田ヒカルさんも)、ドラマの中で描かれる時代を象徴する音楽やニュースやイベントがドンピシャの世代で、ノスタルジーを感じると共に感情移入しやすく、ドラマの世界観に没頭できました。主演の満島ひかりさんと佐藤健さんを初めとする俳優陣の演技もほんと最高なんですが、特に印象的だったのは各シーンの映像の美しさ。色彩が心に残っていて、青をメインに白や赤のカラーが豊かにちりばめらていて、ウェス・アンダーソン監督の映像を彷彿とさせてくれます。面白すぎて切なすぎて、この年末年始に一気に見終えてしまいました。涙に飢えている人や同世代の人はぜひ観ていただきたい、と声を大にして言いたい!

 

Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

橋本 貴弥 ハシモト タカヤ 

1981年京都府京都市生まれ。30歳からコーヒーの勉強をする為に東京に移住。ポールバセットで約半年、ONIBUS COFFEEで5年半働き約6年間の東京生活を終え、偶然コーヒートレーナーの仕事で沖縄に来たのをきっかけにそのまま移住しカフェで働きながら現在沖縄で自身の店を出す為に奮闘中

5 questions

今気になっている問いは?

「歳を重ねるにつれてコーヒーとどう寄り添っていくか」
コーヒーの仕事を始めて丁度10年になるんですが変わらずコーヒーが好きでこの先いかに生涯現役で居れるかは常に考えてます。

お気に入りの場所は?

「コーヒーショップ」
コーヒーショップ巡りはコーヒー業界に入る前から自分のライフスタイルの中心になってます。旅行に行くにもまずコーヒーショップを探します、と言うかコーヒーショップ目当ての旅行しかした事ないです!

 

譲れないこだわりは?

「一人の時間を作る事」
仕事上人と関わることが多いので一人の時間を作り脳と身体のリセットをする事です。スケジュールも出来るだけ詰め込まないようにしてます。

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

しばらく会えていない家族ですね。

あなたのギルティープレジャーを教えてください。

実は昔からゲームが好きで10代の頃はゲームセンターに入り浸っていました。今も街中でゲームセンターを見かけるとワクワクします。時間があれば自宅でゲーム配信動画を見たりして過ごしています!

 

Fancy a refill?
編集後記 

昨年末、日頃利用しているコワーキングスペースの大掃除に参加しました。大勢で掃除すること自体、かなり久しぶり(おそらく高校生以来?) だったんですが、なかなか楽しいもんですね。

学生の頃は掃除の時間サボってばかりだったし、自宅の掃除となると今でもやる気がでないものですが、共同作業としての大掃除にはどこかイベント性があって途中から作業に没頭していました。

もういっそのこと大掃除だけじゃなく「大料理」「大洗濯」とかいって地域の人たちが集まって家事を日頃からまとめてやっちゃえば楽なのになーなんてことを妄想していたらもう2023年でした。本年もThe Weekend BrewならびにStandartをよろしくお願いいたします。

Atsushi

 


今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?

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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第22号スポンサーのCROWD ROASTER、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAETZINGER x BREWMATICPhilocoffeaのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)