これまで6年近くStandart Japanをつくり続けてきても変わらないのが、印刷会社から届いた新刊を受けとるときの気持ちの高まりです。ただ、先日リリースされたStandart Japan第25号は、いつもよりちょっとだけ特別でした。それはこの号が、読者の皆さんと私たちチームStandartにとっての新しい時代の始まりを示すものだったからです。
すでにお気づきのとおり、この度Standartのロゴと紙面デザインが一新されました。これは、コーヒーにまつわる多様な物語を表現するという、創刊当時からの目標をより効果的に実現するため、半年間、社内外の人たちと協力した結果です。
ロゴには少し変わった形をした「R」と、ゆったりした文字間のスペースが特徴のサンセリフフォントを使用し、これまでよりもアプローチしやすい雰囲気を目指しました。
表紙や記事に用いられるビジュアルなど雑誌全体の色彩は、生産地ごとに大きく異なるコーヒーのフレーバーから着想を得ました。その結果、コーヒーの世界の風味豊かなスペクトルを称える、印象的なカラーパレットが生まれました。さらにこれまでよりも写真をはじめとする視覚的要素を際立たせ、全体的な読書体験の向上を目指しました。
新しいデザインの影響は雑誌の見た目だけに留まりません。判型の変更(第24号からの変更)によって印刷用紙を効率的に使えるようになった結果、版の量が減り、それに伴って原材料や印刷時に使用されるエネルギーを節約することができました。節約できたエネルギーをどうしたかというと、読者の皆さんへ還元すべく、20ページほどページ数を増やしてボリュームアップしました。雑誌が以前より分厚くなったのに気がついた方も多いのでは?
個性的かつ大胆でありながら、親しみやすく楽しく。
タイポグラフィ上の大きな変化の一つが、コーヒーに入れたミルクのように自由に漂う記事タイトルです。これは遊び心ある視覚的要素として、また文字に集中するうちにつまってきた息を一旦はきだす休憩所として機能しつつ、前後の記事をゆるやかに結びつけています。
新デザインの開発に携わってくれたタイポグラファー・グラフィックデザイナーのセバスチャン・カンポスさんは、今回私たちが採用したグリッドシステムについて次のように語っています。
「STANDARTというの8つの大文字がページの幅を等間隔に分割し、定規や秤といった計量器を視覚的に示唆しています。
そしてそれを縦に繰り返すことで、ページの高さも等間隔に分割され、空間を表す座標系が示唆されています。
最後に、すべてのタイトルを構成する文字は、地図上の地点のようにゆるやかに配置され、その空間の輪郭を描きだし、読者の居場所を視覚的に伝えるのです」
と、細かな点を数々ご説明しましたが、新デザインを通してやりたかったことは、これまで以上にポジティブで創造的な読者体験を皆さんに提供することです。私たちは好奇心こそが有意義な変化の原動力であると信じています。雑誌を通じて読者の皆さんにもコーヒー、そしてその周りの世界を探求し続けてほしいのです。
それでは皆さん、お気に入りの一杯を手にゆっくりと椅子に腰掛けたら、新しいデザインのStandartと一緒に、すばらしいコーヒーの世界を堪能しましょう。