Standart Japan第23号のパートナーを務めてくれた、シンガポール発のオーツミルクブランドOATSIDE。オーストラリア産の良質なオーツ麦を自社工場で丁寧に焙煎し、本来の甘みを最大限に引き出すことで生まれる、優しく濃厚な味わいに定評がある同ブランドのオーツミルク。その魅力についてOATSIDEのコンサルタントを務める、株式会社QAHWA代表・第15代世界バリスタチャンピオンの井崎 英典さんにお話を聞きました。
数ある植物性ミルクの中でもOATSIDEのオーツミルクを選ぶべき理由を教えてください。
OATSIDEのオーツミルクは自社工場で全て生産されており、独自の酵素処理を施すことで水っぽさがなく、とてもリッチで甘いのが特徴です。そのため、コーヒーの風味を邪魔しません。また多くのメーカーが加熱工程でオーツをスチームするのに対しOATSIDEは焙煎しているため、オーツ特有の生臭さが消えるだけでなく香ばしさが生まれ、結果的にコーヒーとの相性が非常に良くなります。
植物性ミルクはフォームが作りづらく崩れやすいというイメージがありますが、それを克服するコツを教えてください。
前提として良いフォームにはタンパク質と脂質が必要です。実のところ牛乳はタンパク質と脂質のバランスにおいて、最適の素材と言えます。そこがまさにOATSIDEの革新的なところで、製造工程でこのフォームを作るのにちょうどいいタンパク質と脂質のバランスが築かれているため、オーツミルクだけどとても泡立ちが良いんです。
具体的なコツについては後ほどお話しますね。
オーツミルクをメニューに取り入れようと考えているカフェオーナーに向けて、コーヒーの選択やオペレーション面でアドバイスがあれば教えてください。
いわゆる「牛乳に対するオルタナティブ」には、ソイミルクやアーモンドミルクなどオーツミルク以外の植物性ミルクも含まれます。だからこそ、代替物として提案するのではなく、オーツミルクだからこそ飲みたくなるようなメニューを開発することが大事だと私は考えています。
OATSIDEのウェブサイトに掲載されている様々なレシピがきっとそのヒントになるでしょう。抹茶とオーツミルク、エスプレッソを合わせたミリタリーラテのような特別メニューはもちろん、抹茶ラテに取り入れてみたり、夏に喜ばれるエスプレッソバナナシェイクのオーツミルクバージョンを作ってみたりと、様々な使い方ができます。要するに、牛乳のサポート的な使い方をするのではなく、オーツミルクならではのドリンクを作ることで、単価アップも見込めますし、お客様に新たな価値を提供できるということです。
コーヒーとの相性という観点では、OATSIDEのオーツミルクは甘くて濃厚なので、チョコレートっぽいクラシックなエスプレッソとも相性が良いですし、酸味のあるフルーティーなエスプレッソにも、その酸味をオーツミルクの濃厚でリッチな味わいがバッファしてくれて、とてもよく合います。後者に関しては、フルーティーで酸味がより感じられるアイスラテなどとは、本当に相性が良いですね。
オーツミルクは開封するまで常温で保管できる、まさに理想の「ミルク」です。上手く取り入れれば、メニューのバリエーションを増やすことができますし、ヴィーガンのお客様や乳糖不耐症のお客様に対しても、より多くの選択肢を提案ができると考えています。
2023年よりワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)でも植物性ミルクの使用が認められることになりましたが、ミルクの選択肢が増えることでコーヒーの楽しみ方がどのように広がっていくと思いますか?
SCA(スペシャルティコーヒー協会)のCompetition Strategic Committee(競技会のビジョンやミッションを策定しアクションプランを元に戦略を決める委員会)で、WBCでも植物性ミルクの使用を認めようという決断を下しました。WBCの動きは、植物性ミルクを積極的に受け容れようとする世界的な動きと呼応しています。
最も大きなポイントは牛乳の環境負荷に対する懸念です。また、世界にはヴィーガンや、乳糖不耐症の方もたくさんいらっしゃいますよね。ヴィーガンの方が(牛乳のような)動物性のものは全く摂らないのはすでに周知の話ではありますが、日本人にとってより身近な話題が、乳糖不耐症です。乳糖不耐症というのは体内でラクトース(乳糖)を分解できない症状なのですが、簡単に言うと、牛乳を摂取することによってお腹が緩くなってしまうことを指します。実は、本当に飲めない人だけではなく、アジア人の約8~9割がこの乳糖不耐症に該当するらしいんです。
こういった背景から、WBCでも植物性ミルクが導入されるに至ったわけです。
その一方で、「完全に植物性ミルクに切り替えればいい」「牛乳が悪だ」とは微塵も思っていません。私は植物性ミルクと動物性ミルクが共存することで、よりサステナブルな未来が築けると信じています。
大事なことは、選択肢を増やすこと。「牛乳だけ」または「植物性ミルクだけ」とラディカルな立場をとるのではなく、多くの選択肢がある中で、「今日はオーツミルクが飲みたいな」「今日は牛乳が飲みたいな」といったように、様々なニーズを満遍なく満たしていくことが、私たち、嗜好品を扱う業界にいるプロの責務だと考えています。
繰り返しになりますが、植物性ミルクと動物性ミルクの共存こそが、とても重要だと確信しています。
最後にOATSIDEを使ったおいしいラテのレシピを教えてください。
先ほど、植物性ミルクはフォームが作りづらく崩れやすいという話が出ましたが、この質問とも関連しますので、その話をもう少し深堀りしますね。
ポイントとなるのが、エスプレッソとミルクのpH(水素イオン指数)の差です。エスプレッソはpHが低く(つまりは酸性の度合いが強い)、通常pHが低い液体の中に植物性のミルクを注ぐと植物性タンパクが凝固し、ザラザラした質感が生まれてしまいます。植物性ミルクだとラテアートが描きづらいという話も、それもまさにこの凝固が原因です。あとはフォームを形成するための油の量が少ないという要因もあります。
pHの差や成分についてはどうにもできないのですが、植物性ミルクでラテが作りにくいもう一つ要因となっているのが、温度の差です。非常に高い温度のエスプレッソの中に、冷たい牛乳やオーツミルクを注ぐと、一気に凝固が進んでしまいます。温度差に関しては、ちょっとした工夫で改善できるので、私がおすすめするおいしいラテの作り方と合わせてご紹介しますね。
まず、エスプレッソを冷やします。「エスプレッソを冷やしていいの?」と思うかもしれませんが、実はこの点について私が携わっているバリスタハッスルというコーヒーのオンライン教育サービスで、以前検証したんです。
ダブルスパウトのポルタフィルターを使っている場合、2ショット取れますよね。例えばラテを一つ作った際に1ショット使って、残りの1ショットは捨ててしまうことも多いと思います。そこで余ったコーヒーをとっておき、30分~1時間後にラテを作った場合、味わいに差があるか検証しました。結果、ほとんど味わいの差は出ませんでした。
この結果を植物性ミルクに応用し、抽出したエスプレッソを冷蔵庫の中に入れて1~2時間程度置いて温度を下げておけば凝固を減らせます。そして冷やしたエスプレッソとオーツミルクを一緒にピッチャーに入れスチームすると乳化が進み、トロッとした質感が生まれます。オーツミルクの風味とコーヒーの風味がうまく調和するので、本当におすすめです!
重要なポイントだけ繰り返すと……
- エスプレッソを冷蔵庫で1~2時間冷やす
- 冷やしたエスプレッソとオーツミルクをミルクピッチャーに入れ、一緒にスチームする
- おいしいオーツミルクラテラテの完成
アイスラテに関しても同様です。冷やしたエスプレッソを準備して、そこにしっかりと冷やしたオーツミルクを入れます。ホットとアイスに共通するポイントはオーツミルクをしっかり冷やすこと。おすすめの比率は、エスプレッソが1に対してオーツミルクが4〜5。ぜひみなさんもOATSIDEのオーツミルクで試してみてください!
この記事は、Standart Japan第23号のパートナーOATSIDEの提供でお届けしました。